印象的なのは、状況描写に音や視覚を効果的に使っていることです。

極めてマンガチックなので、マンガで読むシリーズに発展したのも頷けました。原作をどんな風に切り取るのかが、原作がある映画の見どころなのだなと思いました。蟹工船は1950年代にも映画化されたようなので、今度はそっちを見たいと思っています。SABU監督のオリジナリティはやっぱり前半部分で、途中の私が???と違和感を感じた辺りから原作そのままのセリフを使ったり、ストーリーに忠実でした。(原作は銃で撃ち殺してしまうというものではありませんが。)SABU監督のテーマは「考えて行動する」ということだったようです。


私が原作で感じたのは、敵とされている鬼監督も実は漁夫側の人間だということです。鬼監督の人間性は極悪非道なのですが、結構人間味が出ていて、最後まで読んでみるとどうやら彼も実は敵ではなく同じ犠牲者なのだということがわかりました。蟹工船で働く人すべてが資本主義(金持ち)の犠牲者なのだというメッセージが伝わってきました。うろ覚えですが原作の鬼監督は、小太りで南瓜のような頭で、そして歯の中につまっているものをようじを使ってピンピンと外へはじくような人です。。。(西島さんとは全然違いますね〜。)そして小林多喜二はこの蟹工船に登場する登場人物すべてに愛着を持っていることも何となく伝わってきて、それは小説の最後に、その後この登場人物たちがどうなったのかを、追記で書いているところなどで感じました。それから、小説には性に関するテーマが結構色々入ってたのですが、映画ではすべてカットされていたのが残念です。小説はとても読み応えがありました。気分がかなり暗くなってしまいますが。。。。


そのあと、太宰治の『富嶽百景』を読みました。それで少し気持ちが明るくなりました。こちらの登場人物はお茶目でいじわるな人達が多くて、平和な世界なので、読んでいてほっとします。こっちの方が、まだ楽しみながら読むことができますね〜。私も富士山で写真を撮ってくださいと頼まれたら、一度は主人公のように撮ってみようかな。。。なんて思いました。